うろんむろん

ヌルッとした手ごたえがあった。
否応なしにめぐる世界が様相を変えつつある。
すがりつきたい手すりはあの人の腕の太さにそっくりだった。

夜。渡る必要のない歩道橋を渡る。
流れていく車のライトをみながら口遊むメロディー。
役に立たぬ情報から手繰り寄せた真実は、でっち上げの実によくできたストーリーで、頭の中のカンヌ映画祭ではスタンディングオベーションが起こっていた。

怒(いか)りながら破顔し、悲しむそぶりで悦びを噛み締めていた。