あの頃の音楽

高校生のころ大好きだった曲がイヤフォンから不意打ちに鳴った瞬間、
コートの胸元をぐいーっと引っ張られるような気持ちがした。
その手は女子高生だった私のものだと思うが、とにかく強制力のある、純粋な暴力で、電車の中の会社員の私は、何だかしみじみ切なくなるのだった。
あの頃、この曲が救いで、憧れで、全てをぴたりと言い表してくれていると本気でそう思ってた。
そういう音楽の摂取の仕方は、贅沢で、今は失われつつある感覚のように思う。
それを惜しむ間もなく電車は走る。