可塑性

笑ったときの、目元がうつくしい人だった。
目尻にあらわれる皺、目蓋の引き攣れ方、まつげの揺れ。
相対する者に、何か豊かなものを共有できているという自負を齎すような笑い方だった。
後期(私たちの付き合いにおける)の荒んだ様を知っているがゆえに、尚更そう思うのかもしれない。

笑ったときの目元があまりにもうつくしいから、わたしはその瞳を知らない。
語りかけてくる皺に目蓋にまつげばかりを見ていて、瞳の色は知らないまま疎遠になった。