不思議体験

就職活動の一環で行った或る企業のセミナーで小学校の同級生と再会した、と書くと就活あるあるの範疇にとどまる出来事なのだが、それを特殊だと感じたのはやはりその小学校が東京から遠く離れた雪国にあったことと私がその学校を五年生の時分で転校していたという事実が大きく影響しているのだろう。彼女とはほんの数か月しかクラスメイトでなかったので私は最後まで小学生時代の彼女の顔が分からなかった。思い出せなかったというよりも、分からなかったと表現する方が相応しい感覚。けれど彼女は私の顔をみた瞬間、小学生だった私の面影が今の私の顔に残っていると思ったらしい。そして特徴的すぎる名字を聞いた瞬間に確信したそうだ。おもしろい。

驚愕と懐かしさと不思議さのあまり、ゆうべの食卓に出されたにも関わらずまたハンバーグを注文してしまったファミレスで過去と今と未来の話をしていると、彼女は就活の不安を口にする私を励ます際に何度も元気という単語を用いていた。あとは笑顔がいいから、結局は人柄をみてるんだよ、等々。
つまり彼女には私はそういう見え方をしているいうことで、今現在私と関わっている人たちに私はあまりそういう見え方はしていないようだという現実と照合してみて、そのことは非常に興味深い案件だと思った。

そしてふと、私は彼女と接する時にきっと小学生時代の私の顔をしていたのではないかと思い当った。
それは演じるという意識のもとで統制された表情、口調、動作ではなく、あくまでごく自然に私の内から溢れ出た無意識のふるまいとして。
小学生の私は明朗快活そのもので、ああこんな感じだったよなと思い出した。何のプレッシャーもなく一つずつ積み木を重ねていくように、積み上げていく好感度。ピアノの伴奏。天にまっすぐのばされた小さなてのひら。怠惰とは無縁の。

本当に稀有な体験をした。なかなか今日のことは忘れられそうにない。