心情

私が祖父と持とうとした二人きりの疎通、そこだけで意味を持ちうる言語を、無理やり自分も共有して管理下に置こうとする為には手段を厭わないその行為を、どうして乱暴で粗野な行為といえなくて?
あの手紙は、たった一度だけ祖父に伝わるよう朗読して、眠る祖父の袂にそっと差し入れて、2000℃の焔で一緒に焼かれるために束の間俗世に存在したもので、それを果たした今、この地平上のどこにも存在理由はない。
だのにその原文を印刷機で刷って、手渡すだなんて。
違ってきてしまう。本意から逸脱してしまう。
一部分を暗記されて、暗唱でもされた日には。
わたしのこころはきっと滅茶苦茶になってしまう。

こころのいちばん柔らかいところを、あの重たい足でどしどし踏み潰される。
降り積もった真白い雪の行方。

どうしても護りたいものを護り通せる自信がないほど、こころが疲弊し切っている。