うろんむろん

ヌルッとした手ごたえがあった。
否応なしにめぐる世界が様相を変えつつある。
すがりつきたい手すりはあの人の腕の太さにそっくりだった。

夜。渡る必要のない歩道橋を渡る。
流れていく車のライトをみながら口遊むメロディー。
役に立たぬ情報から手繰り寄せた真実は、でっち上げの実によくできたストーリーで、頭の中のカンヌ映画祭ではスタンディングオベーションが起こっていた。

怒(いか)りながら破顔し、悲しむそぶりで悦びを噛み締めていた。

素敵すぎて

荒れ地に一人で立っているようなそんな気持ちで冷める一方のカプチーノを掻き混ぜる。泡はもう一面茶色くてドブ川、と思いながらさらに掻き混ぜる。細いスプーンは銀色で鈍くカチカチ鳴っていた。無様、と呟くと晴れ晴れした。

例えば好きってなんだろう。愛も恋も本当も嘘も一つも残らず例えてほしい。
ねぇ、冬は空気が澄んでいるから星が綺麗なんだと説いてくれた人。沈みゆく夕日に郷愁を掻き立てられるのは胎内からみた現実世界の眩しさに似ているからだと教えてくれた人。
例えてよ素敵に。ロマンチックな名詞に知的な副詞とうっとりするよな形容詞をくっつけて。
残らず鼻で笑ってやるから。

青春は神様にレンタルしてる時間なんだ

ごめんね青春より。

毎週毎週、ああ、いいなぁーと思いながら視聴しております。
何というか滋味あふれる作品だなぁと。
青春の眩しさ、とかそういうのじゃなく、五臓六腑に沁みわたる系な気がします。
なにより主演の錦戸さんと満島さんが素晴らしい。
錦戸さんは半熟玉子みたいなお芝居するなーと思いました。トロッと溶けだしそうで溶けない、モロッと崩れそうで崩れない、ちょうエモい芝居でいいなと。
満島さんはお芝居の密度がやばいなと。アニメでいうところの枚数が多いっていうのでしょうか、とにかく表情の繊細すぎるグラデーションとコントラストがやばくて見とれる。

最終回がさみしくて待ち遠しいです。

走れゎナンバー

が、すごくいいなーと。
カッコイイし、気分にすごくフィットしてくる。

古い夢を引っ張り出して眺めてた。
色褪せたそれは私の中の市場でもう価値はなく、ただの懐かしいものと化している。
でも綺麗な字に関しては、昔と同じように感心して胸が高鳴った。
字が綺麗な人は、それだけでうんと得をしてると思う。男女問わず。宝物にしてください、と字が汚い女は勝手に祈る。

秋が去り冬が来そう。
林檎が美味しいです。

ゆるい地獄

ご無沙汰しております。
まいにち日記、あるいは日記は大仰すぎるとしてせめて走り書き程度のもの、は残したいと思いつつ、つつ、つつーっと日々が流れ去っていくのを横目でみるばかりの最近です。
これ、最近じゃなくって、きっと明日も明後日も来年も十年後もだな、とふと思い背筋が凍ったので馳せ参じた次第です。

髪を三十センチ切り、所得に見合わぬ買い物がために困窮し、その場しのぎの仕事をすればツケはきっちり回ってき、同じくらい楽しいことも気泡のように発生しては弾けていく。
明るい秋の日差しに照らされながら冷たい風に打たれた頬が乾燥する。
生きてることとベルトコンベアの上にいること。
わたしの人生はわたしのものだということ。
少なすぎる糸では織り出したいニュアンスが出ない。風通しはまた別の問題だ。

迷うほどの選択肢を見いだせないということ。このうえなくゆるい地獄。

5月30日のこと

突然、圧倒的な断絶のしかたをされ、茫然とし、とにかくクエスチョンマークと驚愕を引き連れたままお別れをしに行った。
顔をみた瞬間、心と体の統制がとれなくなり、ぶざまに泣くしかなかった。
どうしちゃったんだよ。
考え直せよ。
とりあえず深呼吸しようぜ。
いくらでも言える、きみのすごいところ。きみの素晴らしさも、尊さや、生きる価値。いくらでも言える。
けれどもきみは、そうは思えなかったのだろうか。

きみははっきりと、自立したにんげんだった。
きみのものは、誰よりもきみのものだった。
きみの夢も、きみの希望も、よろこびも。
私はそれを素晴らしいと思っていたけど、それは、きみの孤独もきみのものだということだったのかもしれない。
きみの絶望も、きみのかなしみも。
そういうことを考えたこともなかった。

きみに対する思いを誰かと共有する気なんてさらさらないんだ。
飲み屋で安易に語ったり、そんな大人にはならないんだ。

さようなら、永遠に若いままの、私のクラスメイト。

淡々と、切実な

さしあたっての懸念事項を解消していくのに必死で、その先の位相の違う不安には手つかずな日常であります。

津村記久子の「君は永遠にそいつらより若い」を読む。淡々と切実で、諦念と欲望の配合が、「25歳OL」のわたしにはひどく真実味がある。
働き始めてよかったことは、咀嚼できる本の幅が広がったこと。

きもちよさ、を選択する際の優先事項にしたいと思いつつも、やっぱり本当は、血を吐くような目に遭っている自分にも興味があるんだ。